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ときどき日記
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《 秋商戦 》 |
[Vol.204/2024年09月] |
呉服業界の全盛期の頃は、八月お盆明けから実需秋商戦が始まっていました。
古くは呉服業界が隆盛だった頃には、春、夏、秋冬の季節によって新しい商材が発表され、季節感のある商売が主流でした。また需給バランスが拮抗もしくは需要の方が多く商品がひっ迫していたことに加え、流通や移動のインフラが整っていなかったこともあり、全国一斉に展示会を行えず、お盆前に北海道・東北から始まり、徐々に南下していったと聞いています。
また、当時は秋物新作という一年で一番充実した展示会が開催された時期でしたが、当節はオールシーズン、スリーシーズンといったあまり季節感がない商材が多く、また流通も非常に便利になったことで全国一斉に秋商戦が始まります。したがって秋本番の展示会は、特徴のある展示会が少なくなってきました。
さて今年の秋商戦はどのような状況でしょうか。
まだ九月早々で確定的なことはわかりかねますが、前売りの状況は非常に厳しいものがあるようです。先ず一つ大きな原因は猛暑が続いていることです。九月に入っても猛暑日が続き、ひと夏で四十日以上の猛暑日などちょっと前では考えられませんでした。秋の展示会に誘われても、会場に行くどころか家から出るだけでも憚れるような状況です。
加えて、前述したように展示会そのものの特徴がなくなったことも一因かもしれません。
そして最大の原因は変わらぬ顧客に重ね売りし続け、その顧客が高齢化し加えて新規の顧客を捕まえられていない事です。
ではどのようにすれば新規顧客を獲得できるのでしょうか。
着物愛好家の新規客は結局のところパイの取り合いで、業界全体の底上げにはなりません。新規顧客つまり初めて着物を購入していただけるようなお客様は、先ずはフォーマル需要であると考えられます。この話をするとライフスタイルが変化し、そのような新規客はいないといわれるのですが、絶対数は少なくともそのようなお客様はいらっしゃいます。
ただしそのような新規客をどのように育てていくか、長い時間がかかっても着物好きになっていただくことが肝要です。
しかし、残念ながら現時点の呉服業界には少ない新規客を育てる余裕がなく、既存の顧客に重ね売りすることで、かえって自身の首を絞めているのではないかと思われます。
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